ライ・クーダー『Paradise & Lunch』 | Apple Music音楽生活

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レンタルCDとiPodを中心とした音楽生活を綴ってきたブログですが、Apple MusicとiPhoneの音楽生活に変わったのを機に、「レンタルCD音楽生活」からブログタイトルも変更しました。

以前、「不況時代3部作」と言われる、ライ・クーダーの初期の3枚のアルバムを紹介しました。


『Ry Cooder』
http://s.ameblo.jp/ryusyun-sun/entry-12006553404.html
『Into the Purple Valley』
http://s.ameblo.jp/ryusyun-sun/entry-12037762963.html
『Boomer's Story』
http://s.ameblo.jp/ryusyun-sun/entry-12092992853.html


今回、紹介するのは、テックスメックスと呼ばれるテキサスとメキシコのボーダー・ミュージックにライ・クーダーが取り組むきっかけとなった1974年の4枚目のアルバム『Paradise & Lunch』です。

Paradise & Lunch/Ry Cooder

¥1,954
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Track Listing
1.Tamp 'Em Up Solid
2.Tattler
3.Married A Man's A Fool
4.Jesus On The Mainline
5.It's All Over Now
6.Fool For A Cigarette/ Feelin' Good
7.If Walls Could Talk
8.Mexican Divorce
9.Ditty Wah Ditty



次作『Chicken Skin Music』とともにライの最高傑作に挙げる人も多いアルバムです。


まずは、1stアルバムの"Available Space"以来、2作目のオリジナル曲"Tattler"から聴いてみましょうか。
オリジナルとは言っても、ワシントン・フィリップスというブルースマンの曲を、このアルバムのプロデュースのみならずベーシストとしても参加したラス・タイトルマン(元ハーパス・ビザール)と共に改作した作品。



リンダ・ロンシュタットが1976年のアルバム『Hasten Down The Wind』でカバーしたことでも知られてますね。


この動画を観て特徴的なのは男性コーラスを起用していることです。
前作までは女性コーラスは使っていましたが、この男性コーラスがアルバム全体の雰囲気を決定づけている感じがします。


このアルバムでもオリジナルはこの1曲のみで、他は古い時代のブルース、フォークやトラディショナル・ソング(伝承曲)で占められています。
そんな古い歌をひとつ聴いてみましょうか。
1920年代から活動し、12弦ギターでスライドを弾いたピードモントのブルースマン、 ブラインド・ウィリー ・マクテルのナンバー"Married Man's a Fool"
邦題は"結婚したらお終いさ"(笑)



この曲でも男性コーラスの人たちがいい仕事してますね。
間奏のスライドギターもライ・クーダー節で安心して聴けます。
ブラインド・ウィリー ・マクテルの曲は"Statesboro Blues "をオールマンズがカバーしているのが有名ですが、ライのカバーにはブルースからロックへと発展していくような革新性は感じられません。
古い歌に卓越した演奏力で新しい命を吹き込んで蘇らせるのがライの真骨頂です。
この曲は前作までの延長線上にある音と言っていいでしょうか。


さて、冒頭に記した、このアルバムからライが取り組み始めたテックスメックスも聴いてみましょう。
バート・バカラックがドリフターズに書いたナンバーですが、原曲もテックスメックスのアレンジです。
この動画は後半、テープが伸びている部分がありますが、ご了承ください。
"Mexican Divorce"をどうぞ



確かにアメリカのカントリー音楽にメキシコのラテン音楽のフレーバーをミックスしたといった音ですね。
非常にゆったりした気分になれる音楽だと思います。


このライブではフラコ・ヒメネスがアコーディオンで参加していますが、彼がライ・クーダーのレコーディングに参加するのは次作『Chicken Skin Music 』から。
メキシコとの国境地帯、テキサス州サンアントニオに生まれたヒメネスのアコーディオンが入るとテックスメックスらしさがアップしますね。
フラコ・ヒメネスの協力を得て、次作ではライのテックスメックス・ミュージックが大きく花開きます。
90年代後半以降、ライの発表する作品は『Buena Vista Social Club』をはじめとしてラテン音楽が中心になりますが、このアルバムでのテックスメックスの曲がその出発点となったのだと思いますね。


アルバムのラストナンバーはジャズ・ピアニストアール・ハインズとの共演。
曲は「ラグタイム・ギターの王様」アーサー・ブレイクの"Ditty Wah Ditty"
ラグタイムというのは20世紀初頭のアメリカで流行した音楽といいますから、これまた古いアメリカン・ルーツ・ミュージックですね。



これは一発録りのスタジオ・セッションでしょうか。
間奏のピアノとの掛け合い部分での名手ライ・クーダーのギターが何となくたどたどしく聴こえるのは、アール・ハインズの出方を窺いながら弾いているせいかな?
ハインズのピアノを邪魔しないようにギターの音を止めたりもしています。
共演者を気遣うライの生真面目な性格が表れていますね。
対するハインズは余裕たっぷりの自由奔放なプレイはさすがと言うべきか。


1903年生まれのアール・ハインズは、この時71歳。
1920年代にシカゴでルイ・アームストロングとバンドを組み、30年代にはビッグ・バンドを率いて活躍したジャズ史上の偉人です。
当時、27歳のライが、快く共演に応じてくれたアール・ハインズに気を遣うのも無理ないですね。


ライはアメリカン・ルーツミュージックのひとつとしてモダン・ジャズ以前のジャズも取り上げていきます。
1978年にはその名もズバリ『Jazz』というアルバムを発表します。




このアルバムでのライ・クーダーの音楽は目を閉じて音と向き合う、あるいはビートで身体が動きだすという類いの音楽ではなく、ただ、そこに流れているだけで気持ちいい音楽です。
この時期、よく晴れた休日にクルマを走らせながら聴くのに最適の1枚。




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